大垣理事ブログ「越境学習・隣の芝は青いのか?」

大垣理事ブログ「越境学習・隣の芝は青いのか?」

人材育成の方法として、越境学習を取り入れる企業が増えています。

越境学習とは、普段勤務している会社や職場を離れ、
まったく異なる環境に身を置き働く体験をすることで、
新たな視点などを得る学びのことで、 他社留学、社外留学とも呼ばれています。

リーダー人材を育てる上で、極めて効果の高い方法であり、
多くの先進企業がベンチャーキャピタルに社員を派遣したり、
自社の業務とは全く違う業界や、グループ企業外の会社に出向させるなど、
人材育成を目的として越境学習が実施されるようになっています。

私は多角化の進んでいる鉄道会社に勤務していましたが、
40代で鉄道業とは全く違う業界である「葬儀社」に出向したことで、
大きな学びを得ることができました。

当時私が実際に味わった事は、越境学習により、
ホームとは価値観や文化が全く違ったコミュニテイー、
アウェイ感の高い職場で働くことで、
いろいろな混乱や葛藤を通じて、深い内省や学びが得られたことでした。

そして、その経験から、企業のリーダー人材を育成するためには、
越境学習は非常に効果的な方法であり、
企業内で研修を繰り返す方法にはない真剣勝負の教育効果が得られると思っています。

反面、効果の上がらないケースとしては、
越境学習者が自社とは違うアウェイの環境の中で、
全く違った風土や価値観に遭遇し、懸命な努力により、
固定観念を変えて行くことに成功した場合でも、

逆に、元の会社に戻った時に、
企業文化の違いからハレーション(軋轢)が起こることも多くあるように思います。

具体的には、越境学習者が旧態依然とした自社の文化や、
固定観念に再び触れる事で、
今まで不自然とは思わなかった自社の常識に違和感を感じてしまうことで、
「越境学習者は二度死ぬ」とも言われる現象が起こってしまうこともあるようです。

越境学習を進める上では、そのようなハレーション(軋轢)を
緩和させる仕組みの構築が、重要だと思います。

その対策としてはいくつかのポイントがあります。

越境学習者が二度死なないよう、
経営者・人事部門・直属の上司・伴走者の四者がしっかりと連携し
「ハレーション(軋轢)を緩和し、越境学習者の学びを、自社に還元する体制・仕組み」
を作って行くことがまず重要です。

さらに、成功している企業では
越境学習中の越境学習者に内省を起こす仕組みとして、
週報・月報を書いてもらったり、
越境学習者に伴奏者としてのコーチを付けて
フォローしているケースなどがあります。

コーチとしては、人事評価との切り離しが必要で、
社外人材でリーダーや経営者を経験したベテランのコーチを
採用することで成功しているケースが多くあります。
その点で日本リーダー協会のベテランコーチが力を発揮できるように思います。

さら、越境学習者が帰社した後のフォロー体制も重要となります。

具体的には、越境学習者からの報告会を開き、
多くの社員の参加を募り、意見交換会を開催したり、
越境学習の経験を基に、自社の改革に対する提案を求めたりと、

越境学習者の能力開発だけで終わらない、
越境学習の自社への還元の仕組みを作ることが重要だと思います。

いずれにしても越境学習は、組織が拡大しない時代に、
いかに自社のリーダー人材を単は間で大きく育てていくか、
大きな可能性を持っているように思います。